お医者さんの知恵袋
image ■子猫をもらったら家族が痒くなっちゃった■
・・ペットからうつる皮膚病・・

苅谷皮膚科医院 TEL: 045-933-6655
苅谷 英郎
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 今年の7月14日、46才の女性の患者さんが来院しました。「3週間ほど前から両腕と胸に痒い湿疹ができて、売薬の軟膏を塗っていたけど治らない、かえって拡がってきた」と言います。診ると、両方の前腕と上胸部(Vネックのあたり)に、大人の親指の爪くらいの大きさの、丸く赤い斑点がたくさんできています。皮膚科の専門医は、これを見れば診断はピンと来ます。診断を確定するために、発疹の上をメスで軽く擦り、皮膚の破片(鱗屑といいます)をとり、苛性カリという溶液を垂らし、顕微鏡で検査をする準備を先にしてしまいます。鱗屑が溶けて見やすくなるまでに少し時間がかかるので、その間に患者さんにいろいろ質問して経過などを聞きました。
 患者さんの話では、「四国の知り合いの家から、ゴールデンウイークの頃に生まれた純血種のアメリカンショートヘアーの仔猫を6月の下旬に送ってもらって可愛がっている。猫がきて1週間くらいして、猫が痒がっているようで、ノミがいるみたいなので動物病院に通院しているが、自分の痒い発疹もその頃から出てきた」という事です。そこまで話を聞けば十分で、顕微鏡を覗いて見ると、菌糸(カビ)がたくさん見えます。ミズムシやインキンタムシでみられる菌糸(殆どが猩紅色菌というカビ)より、やや幅が広く、淡い感じがします。患者さんの症状と合わせれば、これは間違いなく「犬小胞子菌(Microsporum canis)」という白癬菌の感染による体部白癬(ゼニタムシ)です。痒がっている仔猫の毛を調べれば、菌が見える筈です。この菌は、代表的な犬や猫からヒトに感染するカビです。
 患者さんに猫ノミよりこちらの方がヒトに感染しやすいから要注意と、「Microsporumcanisによる体部白癬」というメモを獣医さんに渡すよう頼みました。
 3日後には17才の娘さんが、10日後には19才の息子さんも同じ症状で来院しました。 顕微鏡検査で見える菌糸はみな同じです。最近の抗真菌剤の軟膏は、正しく使えばよく効きますので、お母さんと息子さんは軟膏だけで治りましたが、娘さんは途中でちょっとしたアクシデントがあり、8月の終りから軟膏だけでなく、2週間ほど飲み薬も併用して治りました。お父さんには感染しなかったようです。
 おまけの話:8月になって、この仔猫が治療に通っていた動物病院の女性職員も同じ症状で現れました。
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